■リフレ派のご本尊クルーグマンは日本の人口問題を何度も指摘。
"Japan's Trap"(日本がはまった罠 1998年5月)

(日本の)労働力減少の見通しは、投資の期待利回りを下げる。

It’s Baaack! Japan’s Slump and the Return of the LiquidityTrap(復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲 1998年)

でも確実なのは、日本の長期的な成長は完全雇用のもとであっても、人口要因で低下せざるを得ないということだ。1980 年代を通じて、日本の雇用は年率 x.x パーセントでのびた∗3。でも、労働力人口はいまやピークを超えてしまった。今後 xx 年で、労働力人口は年率x.x パーセントで減少する(OECD 1997) し、――もし人口学者の人口推計が正しければ――その後 xx 年にわたっては x.x パーセントという驚異的な速度で減少が進む∗4。本論文の第一部における投資と q の議論からもわかるように、こうした人口減少の見通しは、ほかのものさえ等しければ、将来の q の期待を引き下げて、したがって現在の投資も引き下げることになるはずだ。
(中略)
さて、人口学者の予測では、来世代の人口はいまの世代の人口より小さくなると予測されたとしよう。だから労働力も、そして(労働の需要が弾性的だとして)土地の実質価格も下がる。もしそうなら、土地はプラスの限界生産を持つけれど、土地への投資の期待収益は、原理的にマイナスになり得る
 
"The Japan Story"(2013年2月)

日本は財政赤字を長年にわたってつづけてきたけれど,日本の経済的実績は表面的に見るとじつに残念なものだという点だ.ここはどう考えたものだろう?ぼくの答えは2点からなる.第一に,日本の経済成長というか成長しなさ加減について論評しようってときには,人口動態を考慮した方がいい.日本の出生率は低いし,移民流入も少ない.このため,日本の人口は急激に高齢化してきているし,労働年齢人口は減少してきている.……日本はこの20年の多くを流動性の罠にはまったまま過ごしてきた.……なんで日本はこんな状況になってるのって? 1980年代バブルから持ち越された債務はたしかにこのプロセスの起点にはなった.だけど,人口動態もこれに寄与していると示唆するのは理にかなっている.なぜなら,減少中の労働年齢人口によって投資への需要が低く押さえ込まれるからだ.

クルーグマン教授、日本の人口減少を問題視-低成長の要因(2013年2月)

2月6日(ブルームバーグ):ノーベル経済学賞受賞者でプリンストン大学教授(経済学)のポール・クルーグマン氏は、日本の低成長は人口不足の結果だと述べ、労働年齢人口の生産の伸びは「さほど悪くない」との見方を示した。

■内閣府報告書も人口と期待インフレ率の相関を明言
平成23年度年次経済財政報告 内閣府(2011年7月)

生産年齢人口の将来予測と期待物価上昇率にも正の相関が認められる。

■ところがご本尊の言葉を無視曲解して「人口は関係ない」と言い張るのが日本的リフレ派
安倍晋三首相

安倍晋三首相は7日午前の衆議院予算委員会で、デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられるとの認識を示した。民主党の前原誠司委員の質問に答えた。人口が減少するなかで、構造問題を解決しないとデフレは脱却できないのではないかとの質問に、安倍首相は「人口減少とデフレを結びつける考え方を私はとらない。デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる。人口が減少している国はあるが、デフレになっている国はほとんどない」と答えた。(2013年2月7日)

浜田宏一氏
 
「人口構成がデフレの要因だという日銀の愚かな責任逃れ」『アメリカは日本経済の復活を知っている』より第3回(2013年1月20日)
 
日銀は「人口がデフレの要因である」ことも主張したいらしい。ところが、人口をデフレに結びつけるのは、理論的にも実証的にも根拠のないものだ。もちろん人口は成長の要因にはなるが、実質生産に、人口あるいは生産年齢人口が影響するのは当たり前のことである。

 しかし、貨幣的現象である物価、あるいはデフレに人口が効くというのは、経済の解剖学すなわち「国民所得会計」から見ても、生理学すなわち「金融論」から見ても、まったく的外れな議論だ。医学の発達した社会で、床屋での素人談義で患者の診断と治療法を決めようとしているのが日銀の姿なのだ。……人口構成がマクロ経済に関係があるのはもちろんだが、現在の経済学では、デフレの原因とは決して結びつけることはできない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34617 


■なぜリフレ派は頑なに「人口は関係ない」としたがるのか。その理由の推測

(1)人口が関係あるとなると、少子化対策を失敗した自民党の責任となる。「デフレは自民党の責任ではなく、実は日銀のせいだったのです」という責任転嫁。だからリフレ派は自民・元自民とその周辺が多い。

(2)経済学者としては、人口が原因などという高校生でも言えそうなことは言いたくない。 経済学はもっと高度なものだというプライド。