■高橋洋一氏「一般物価水準と相対価格、一般物価と個別物価は別」「一商品が下がれば他の一商品が上がる」

高橋洋一「ニュースの深層」
浜田宏一教授が圧勝した野口悠紀夫氏との議論!アベノミクス実現で「1ドル=120円、日経平均1万6000円」も見えてくる2013年01月21日(月)

 ……野口氏の報告は、インフレ目標を否定した上で、デフレは中国からの輸入のためで、日本の実質賃金が低下していくというものだった。要するに、安い輸入品が国内に入るので、競合品価格が下がり、デフレになるというわけだ。これに対して、浜田氏は、野口氏の議論で一般物価水準と相対価格を混同している、デフレというのは一般物価水準の話であって相対価格の話でないとコメントしている。同じコメントが他のパネリストであった深尾光洋・慶応大学教授からも出された。

 この浜田氏らの反論は、少し経済学の知識が必要だ。ノーベル受賞の経済学者フリードマンががしばしば用いる論法だが、ある特定商品の個別価格の低下は、所得に余裕をもたらし他の商品への支出インセンティブとなり、他の商品価格が上がるのだ。このため、個別物価の平均になっている一般物価は、個別物価が下がっても必ずしも下がるとはいえないのだ。もちろん価格の伸縮性は商品によって異なるので、ある商品価格の下落と他の商品価格の上昇が完全に相殺されることはないが、一つの商品の動きだけをみているだけでは十分でないということは注意すべきだ。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34650


■どう間違いか
(1)エネルギーや土地の価格下落(上昇)は全商品価格の下落(上昇)圧力となる
 たとえば原油という一商品の価格下落は、光熱費輸送費を原価とする全商品サービスの価格下落につながる。つまり「一商品が下がれば他の一商品が上がる」というのは間違い。またエネルギーだけでなく地価も同様。地価が下がれば地代家賃を原価とする全商品サービスの価格下落につながる。逆にエネルギーや土地の値段が上がれば、それらを原価に含む全商品サービスの価格上昇につながる。
 つまりリフレ派はエネルギー・土地のような「他の商品価格に大きく影響する一商品」が頭から抜けている。 あるいは「ある一商品価格が他の商品の原価になる」という考え方が頭から抜けている。

(2)「一商品価格下落=当該業界の人は所得に余裕が無くなる」の要素を忘れている
たとえば地価が下がれば不動産など土地関連業界が縮小し、その業界内の労働者の賃金・購買力が下がる。
つまり土地不動産業界の人の「所得に余裕が無くなる」。これを高橋氏はどうやら忘れている。だから「ある特定商品の個別価格の低下は、所得に余裕をもたらし」などと言ってしまう。


「一般物価水準と相対価格は違う」「一商品が下がれば他の一商品が上がる」「一般物価は、個別物価が下がっても必ずしも下がるとはいえない」というのはリフレ派の根本主張の一つだが、上の通り間違っているだろう。