金一勉「天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦」 1976年4月30日第1版第1刷発行1976年4月30日第1版第2刷発行 78ページ

・・・朝鮮出身の兵士(陸軍志願第二期生・金○炳)の目撃した現場は次のようであった。

  ほとんどが朝鮮娘である一群の女どもがトラックに乗せられて到着した。「女子挺身隊」と呼ばれる慰安婦たちであった。幕舎は毛布などで間を仕切って、女たちを配置させ、部隊の全将兵は広場に整列した。部隊長は何やら一席をしゃべり、女が待っている宿舎へ姿を消してしまった。兵卒どもは間を仕切った幕舎の前に列を作り、自分の番をいらだたしく待っていた。一人が入って用務を済ませるまで十分足らず、長くて十分ぐらいである。十五分にもなれば、行列の兵卒どもの口からわめき散らす悪口が飛び出した。

  女はズロースを脱いだり着たりする間もなかった。天井に向かって仰向けに横たわっている藁人形同様であり。身動き一つしない。時が経つにつれて女の下半身は血に染まっていった。行列の三分の一も減る前に女たちは医務室へ担ぎ込まれたとのことであった。(林鐘国「女子挺身隊」『アジア公論』七四年三月号)