まず、手紙を読んだ日本軍の感想
三、抗日的郵便物の内容(別冊 参照)
支那民衆の手紙に表現せられたる抗日意識を仔細に点検するに愛国的熱情を盛れるもの決して尠しとせず、
出征兵士を激励する父母、兄弟姉妹朋友等の態度は皇国に於けるものと類似せるものあり。
是等手紙は皇軍の直接占拠せざる地域より発せらるると共に皇軍が直接警備せる都市、鉄道沿線よりも亦発せらるもの少からざるの事実に鑑るに民衆獲得の容易の業にあらざるを認む

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レファレンスコードC11111669200(9枚目)
方参特報綴 昭和14年1月

以下手紙
方参特報第七号 昭和十四年一月九日杉山部隊参謀部 
抗日意識を盛りたる北支民衆の通信文抜粋 

本書は憲兵隊の努力蒐集せる北支民衆の封書類中抗日意識を盛りたるものの主要なるものを抜萃せるものにして昭和十三年十、十一月の二ヶ月分のものなりとす。

[日付] 十二月十一日
[発信者] 河北省安平県西満正 張雲祥
[宛名] 河北省霊寿県陣荘 第一戦区第一遊撃隊 趙蘭欣
[本文の内容] お前は今漸く十六歳の少年に過ぎざるも抗日救国の熱情に燃へ出征してゐる事は家族中の名誉であるお前のお父さんも外部に於て救亡工作に元気で従事して居るから安心せよ

[日付] 十月二十一日
[発信者] 南和県崗上村 関凌湖
[宛名] 彰徳府六八九団三営十二連 関礼的
[本文の内容] お前の入隊を父は非常に喜んでゐる抗日救国はお前の主義であり又父も同一精神であるお前は軍隊に軍隊にあり忠を盡し以て日本に抵抗して救国さへ出来れば父は死んでも歓(?)喜する茲に頼むことはお前の徹底的抗戦である

[日付] 八月二十八日
[発信者] 父(河北省東明南五十五里身屯村)
[宛名] 郭峻堂(●《草かんむりに「宮」》県●●六〇五里●●●春堂)
[本文の内容] 我子よ隊内にありて長官の命令を良く守り其の成果を挙げよ

[日付] 十月十五日
[発信者] 河南井店鎮 蘄富礼
[宛名] 三陽鎮 陸軍三十二軍補充二団七連 蘄書延
[本文の内容] 現在中国民衆は抗日戦線に立たねばならない時機に於てお前等青年級の者は家事等顧る時でない家の事は一切父が引受てやる長官の命令に服従し殺敵に努力することを切に望む

[日付] 十月十日
[発信者] 安平県崔岑村 父母出
[宛名] 南官大屯村八路軍遊撃隊政治部 少年先鋒隊 李成群
[本文の内容] 今お前は南官の第八路軍にて訓練を受け居る由父母は此の上なき光栄と思ふ現下国内情勢はお前等青少の活動すべき時機なるを以て軍紀を守り活躍することを希望す

[日付] 九月十八日
[発信者] 沂州東十字路 候の父
[宛名] 広西省●●市 候伝●
[本文の内容] 汝の兄は在営健全なり血戦中は弾雨の中に生命を保った富貴生死は天に任す尚意気旺盛だ今こそ正しく救国の時期到来した

[日付] 九月二十六日
[発信者] 新安県崔公堤村 母
[宛名] 定興県青荘村或江村 国民革命軍陸軍第八路先進支隊 崔永芳
[本文の内容] お前は長官の命令には絶断に服従し同志に対しては敬愛を旨とし謙和を以て苦痛を忍び犠牲的精神を以て国に報ひ万々家庭の事情は考へてはいけない
「忠を盡す為に孝行が出来ない」
と云ふのが今の本当の状態なのです
国民として責を果さねばなりません家のことは村人が見て呉れますから心配は無用です

[日付] 九月二十七日
[発信者] 母(山東省●県)
[宛名] 呉龍奎(湖南長沙府砲兵十三団通信隊)
[本文の内容] 我国は当然亡国すると思ふ
日軍が引揚げれば・・・・

[日付] 十月二十日
[発信者] 河南省鎮在県栄三探庄 父
[宛名] 安徽省馬山一〇五師六〇三団 何●●
[本文の内容] 国策の為め働くお前の職は立派なものだ何時も上官の命に従ひ忍耐して倭冠〔ママ〕の不法を撃退する迄は断じて帰らぬ様に

[日付] 十月十九日
[発信者] 西安第十後方医院七号 袁栄昌
[宛名] 河南省封邱県北手●和堂 学友手
[本文の内容] 私は毎日国家のため日本鬼子駆逐の為働き負傷された勇士の看護に当って居ります此処に見る将兵の勇姿には感服致します一日も早く鬼子撲滅に邁進して下さい若し私が男子であったなら立派に奮闘するのですが女の身で残念です

[日付] 十月十二日
[発信者] 深県津南坑〔ママ〕日自衛軍第三支隊々部 王習知
[宛名] 清宛県揚●鎮第八路軍第三縦隊第八支隊第二十二大隊第二●第六連 王子珍(?)
[本文の内容] 聞けば最近第八路軍内にて働いて居る由家内一同悦んで居ります第八路軍は立派な軍隊ですからお前も抗日軍人として規則を守り固い決心を以て奉公をなせ兄も今は津南抗日自衛軍第三支隊警衛第二連に参加して居る

[日付] 十月二十一日
[発信者] 漢口 喜亭
[宛名] 張家口●●●子巷八● 傳敏●
[本文の内容] 時局未だ安定せず私の行動も如何に変化するや不明此処に遺言を記す(1)解放運動に努めよ(2)健康に留意し子供を育て国のため盡せ

[日付] 十月三十日
[発信者] 兄栄貴(河南蘭封県東六十六里王双橉
[宛名] 趙文巳(湖南衡陽県南外獄(?)屏書院
[本文の内容] 暴逆なる日本軍は中国を侵略せんとして居るも其の意の如くならず当地にも日軍は二回来るも占領能はず
軍紀を守り上官の命に従ひ国を守り民を愛するのがお前の責任なり

[日付] 十一月九日
[発信者] 楽陵県城北韓家庄 父 郭希曾
[宛名] 山東日照県石臼井自怡連軍(?)暫編第一旅独立迫撃砲隊 郭連
[本文の内容] 最も良きは即ち帰郷し何等かの抗日工作をなし国民の天職を盡す事にして再び日本軍の走狗となり偽軍となる勿れ茲に別紙の通り数枚の「ビラ」を同封するにつき汝の同志等に見せ或は暗に街上或は通行繁しき地点に貼り出されたし
(共産第八路軍の署名ある左記二種の激〔ママ〕文を同封しあり)
○日冠〔ママ〕の圧迫下の偽軍に与ふ
○日冠、銃殺せる盬(?)山偽軍長張玉●等のため偽軍に告ぐるの書

[日付] 十月三十日
[発信者] 聊城々内東口北街十六 秀容
[宛名] 臨邑城内支●街六 張●●
[本文の内容] 君等軍人は軍人としてなすべき事を努め生命を度外視して熱血を以て戦ひ帝国主義者の暴行に抵抗し国家の恥辱を雪がれたし之実に最も光栄ある事なり

[日付] 十月六日
[発信者] 山西省朔県城内節孝 水安濟(?)
[宛名] 陝西省安●●新城●立●●中学校 水安洛
[本文の内容] 昨年日軍入城後城内住民八百名程惨殺された其時父も殺された生きてゐて圧迫せられるよりも死んだ方が幸福だ長兄にも通知して将来此の仇をとる様に奨めて下さい

[日付] 十月十九日
[発信者] 山東省臨清県郵政局 施
[宛名] 河北省灤県西関●文中学
[本文の内容] 骨肉横飛する中に依然として打倒日本帝国主義を叫びあるは如何に快楽なることよ
将来我々青年の血より一個の新しき長城を築き以て数十年の恥辱を茲に雪がん

[日付] 十月二十七日
[発信者] 山東聊城文化供応社 蒋承立
[宛名] 河北省広宗県政府 玉県長
[本文の内容] 君が現在広宗県で県長になった事を聞き非常に愉快だ我等が茲に希望することは全県民衆を導き抗戦し救国の道を行くことに努力することです

[日付] 十月三十一日
[発信者] 昌楽馬朱 曹子君
[宛名] 泰安城東邱家店
[本文の内容] 国家の存亡の秋に当りて家の事情等に関って居ることも出来ません妻の事も省る余裕も持ちません
妻にも僕達の工作が完全に出来たれば将来笑て楽しく暮せる時期が来ると言って下さい

[日付] 十月二十五日
[発信者] 覇県蘇橋東楊荘 董玉志
[宛名] 河北省安国県伍二橋 董福志
[本文の内容] 父上様不肖入隊以来抗日救国に献身努力致して居ります国家無きは我家無しと同様でありますので私は身命を投げ打って殺人放火掠奪を為す日本鬼子の撲滅に専念し自由平等の生活を争取せんとして居ります

[日付] 十月十五日
[発信者] 冀県民軍二路総司令部伝令股 張文生
[宛名] 東明県馬頭集 張文生本宅
[本文の内容] 父母への不幸は已むを得ません
国歌が極度の危機に迫りたる折柄私等青年の一身上の事情は次の問題です聞けば兄が家に帰った由兄を再び出さぬ様にして下さい

[日付] 十月十六日
[発信者] 山西省炙県一六九師一〇七旅二五一団 父
[宛名] 河南省大〔ママ〕康県陳荘 陳翼雲
[本文の内容] 敵殲滅のため努力中にして若し父の戦死後はお前が此の父の抗日救国の意思を継承し永久に国に盡すべし
此の父の命は必ず守られたし

[日付] 十月二十日
[発信者] 山西省沁県王崟
[宛名] 河内省〔ママ〕永城県薜湖 王白福
[本文の内容] 小生帰家し得ざる原因は国難の最極端にある中国更生のため身命を捧げある故なりもちろん一人二人の力にては現状を如何とし得ざるも民衆も兵も皆力を尽すなれば我国も今新に世界の強国となり得る郷里の父母よ何卒中国更生の為犠牲となり国難に殉ぜられたし

[日付] 十月二十三日
[発信者] 浙川県上集 湧泉観
[宛名] 滄県西杜林荘張家口 張培益
[本文の内容] 小生三月以来河南国立中学校に入学す同校は毎日午前中軍事教練全校生徒一二〇〇名抗日英雄たらんと寧日なき猛訓をなしつつあり
日寇に対し現在の位置転(?)例さすも遠からずと希望に燃へるなり君も中国永遠の平和と自由を確保せんが為帝国主義日本侵略排撃を邁進し共に中国和平のため奮闘されんことを望む

[日付] 十月二十二日
[発信者] 清苑県中家荘 路光陸
[宛名] 粛寧県城北太高家村 高文●
[本文の内容] 吾々は再び抗日の旗幟を立て早速朱司令の処に行こう万一君が同意せざるも私だけでも行きます朱司令は本当に抗日の英雄です日本も程なく失敗して逃走する様になるでせう

[日付] 十月二十六日
[発信者] 河北浅水県 史質堂
[宛名] 山西損県陸軍第十師三十九旅五九団部 史雪堂
[本文の内容] 遊撃戦術を利用して張坊婁村六区一帯を活動して居る敵の占領せし地点は僅かに鉄道沿線及城市なり他の大都市は義勇軍の範囲なり双方は常に衝突を免れず日軍の到達する故無くして焼失殺傷掠奪姦淫が行はれ紫荊関沿線の焼失最惨たり通信所は河北県●県石亭鎮内 史質生

[日付] 十月十四日
[発信者] 臨 治原裕源棧 旭光
[宛名] 萊陽北郷朱留鎮 玉昇
[本文の内容] 現在時局緊急なり今家を出れば日軍には中国軍の密偵として捕われ中国軍には漢奸と思はれる喜で国難に赴き刀折れ力尽きる迄戦ふ私の決心は生を棄て死を以て民族生存の為国家の栄光のため戦ふ積りである

[日付] 十月二十四日
[発信者] 山西省垣曲県上坡城村 田文林
[宛名] 曲陽県城南北楊馬村 田老
[本文の内容] 現在の処帰郷は不可能であります之も皆悪鬼日本帝国主義の為であります国土は侵され父子の対面も意の如くならず私は百度転(?)んでも残酷無道なる日本鬼子を駆逐せねば止まない決心をして居ります現在我隊では補充兵訓練をやって居ります通信先は山西省垣曲県上坡城村陸軍独立第五旅六一四団々部宛

[日付] 十月二十六日
[発信者] 冀中区北上覇県工作団
[宛名] 河北省定県 西王村
[本文の内容] 不肖は五台山の軍政学校に於て訓練を受くること三ケ月爬山走歩の行を積み身体を鍛錬し軍事政治学を学び新知識を注入致しました卒業後当工作団に配置され現在に至って居ります今後は家庭の観念を捨て抗日を最大の抱負となし中華民族解放を目的とし日本鬼子と闘ふ決心であります

[日付] 十月十六日
[発信者] 中央直轄忠義救国軍第一路第一団第一営長
[宛名] 山東東昌府第六区遊撃司令部騎兵団
[本文の内容] 私は張司令の救国の英雄たるを知り張司令隊に入隊し抗日工作に従事して居ます張司令に報ゆるは唯抗日工作の完成だと思ひます

[日付] 十一月四日
[発信者] 県第六師四団九連 東高
[宛名] 曹州金堤集西街
[本文の内容] 目下支那は朝存夕亡の時にありて救国せんには必ず我等青年に俟つべきにして目下救のため活動するは家庭にて両親に孝を尽すと同様なり現在日冠の到る処殺人、放火をなし居るに我等は安居楽業をなし得るや必ず共彼等を支那より駆逐せねばならない

[日付] 九月二十八日
[発信者] 李志智
[宛名] 河間県第一分区司令部団長佩林
[本文の内容] 1 抗戦初期に於ける部分的領土の損失を以て日中戦争の運命を判断するは早計なり此の一年間の抗戦により日寇に対し相当の打撃を与へ我々は最後の勝利と抗戦継続に対する基礎的確信を得たり
2 全国の武力、人力、資本を動員し長期抗戦に対処すべし

[日付] 十月六日
[発信者] 清苑県婦女抗日救国会清苑県温仁村
[宛名] 安国県南関婦女救国会 王景雲
[本文の内容] 婦女会は二十余ケ村に組織され旧九月二十一日に婦女幹部訓練班を開始することになり一週間位の期間で人数五十人を内三分一は農民分子だが精神は非常に良好だから村の婦女救国会の領導をする様になると思ひますが九、一八記念日も中秋節もあり演劇の準備や提灯行列の準備で多忙です

[日付] 十月二十二日
[発信者] 昌村北辛 丕紳
[宛名] 四川重慶載家巷 寛仁医院
[本文の内容] 此の地方の治安は皆我国の軍隊の手で保たれて居って決して日本軍の支配は受けて居りませんから御安心下さい村の者で十八歳より十五歳迄の男子は全部軍隊教練を受けて有事に備へて居ります

[日付] 十月三十日
[発信者] 河南宝豊県軍政部一二七後方医院 呂元祖
[宛名] 浙江省陽蔡県文清金店 蔡林喜
[本文の内容] 充満せる傷兵は口々に倭奴を呪咀失地の回復を希ふ中国の現状は皆倭奴の責任にして我等は断じて此の悪魔と妥協し中国を滅亡させるに忍びず飽迄抗戦を徹底するものなり

[日付] 十月三十日
[発信者] 洛陽一六六師歩四九八旅司令部 王慶林
[宛名] 河南封邱県留光集大岸村 王茂謀
[本文の内容] 抗戦数ヶ月全く生きたる心持無く経過せり吾人は飽迄日本帝国主義の奴等を打倒し軍勢を殲滅して自由平等平和の中国を建設せざれば断じて凱旋するものにあらず

[日付] 九月二十八日
[発信者] 盬山城内 氏名不詳
[宛名] 滄県柳家荘 馬桂臣
[本文の内容] 日本軍は軍紀風紀の厳正は世界第一なりと誇張して居るが事実と雲泥の差あり中国の雑軍と大同小異なり日本兵が煙草を口にして民衆を訪問「マッチ」を要求す之は彼等の常習手段である即ち何所に好い女が居るかを物色するが目的である昼間物色して夜間侵入して人妻であらうと娘であらうと構はず強姦する

[日付] 十一月四日
[発信者] 北京安内●官●六号 彦章叩
[宛名] 鹿邑県城内石陽 梁萩江
[本文の内容] 到る処其の擾乱を受けて居ります思ふに日本軍を依頼せよと云ふも日本軍人八十人の中一、二人位しか良心を持つ者なく之では我国は滅亡の外なく到底恢復の見込はつきません

[日付] 十一月六日
[発信者] 漢口大智邊協盛客棧 幹臣
[宛名] 永城県西南三十五里●王集 刻湧泉
[本文の内容] 此の儘我国が失地を回復することが出来なかったら貧困なる民衆は只死より外はありません
我祖国が彼等に占領され一年前の如く邪好なる鬼子蹂躙される事を考へる!口惜してく〔ママ〕口惜しくて堪りません
此の苦痛を味ひつつある我等は全能を発揮して第一線の勇士を助け御国の為に努力しませう

[日付] 十一月七日
[発信者] 山西省遼県第一二九師警備第二連 封国英
[宛名] 河南省寧陵県南街 封克文
[本文の内容] 最近叫びつつある帝国主義は我中国人には誠に不合理にて何処の国にも其の国の古代本性がある中国の子孫は決して日本と交ってはならぬ又帝国主義を信ずるものは自国自滅の基である我等は速に中国より日本を撃退し我国を救護しよう云々・・・・

[日付] 十一月五日
[発信者] 北京盧(?)水春医(?)院 戴某
[宛名] 香港九龍旺角荔枝角道一三三号二楼 戴徴(女)
[本文の内容] 近日来広州陥落の報伝はり非常に不安を感じあり又一面に於て国人(国民党)の無能を痛心しあり平素は一人天下の如き言を吐く広東人も此の時に到り些かの抵抗もなさず敵人に蹂躙せられたり且喪心病に狂へるが如き一部の人は走狗となり敵人に従へり実に涙するに余りあり

北京新聞の漢口陥落状況を記せるもの封入しあり

[日付] 十一月二十四日
[発信者] 北京静生々物調査所 胡緒博士
[宛名] 香港ロビンソン路二十七号 陳夫人
[本文の内容] 漢口、広東の陥落に痛く落胆致されて居られる様ですが私をして言はしむれば吾人は最後の勝利に対し更に楽観論を持つべきである

[日付] 十一月二十二日
[発信者] 青島市膠州路七五号天賓(?)銀楼 錦棠(?)記
[宛名] 寗(?)波慈東洪塘鎮 万与蔬菜行気付洪思義内 慶棠
[本文の内容] 現在の我々は何事に依らず其日其日を敵の命令に依って生きて行かねばならない様な状態だ青島も亦十八歳から三十五歳迄の者を抽籤して青年団を組織する様になった(敵の意図に依り)然し彼等の為に召集される位なら寧ろ自分の国のために召集されて行った方が何れ丈良いか判らない敵のために働く位なら国のため死にたい

[日付] 九月十八日
[発信者] 安徽省雲和県程宅小学校 張煥南
[宛名] 前線将兵宛
[本文の内容] 今日は九、一八記念日で私達の悲憤甚しきものがあります我々人民が一般協力抗戦に努むれば最後の勝利は我々の頭上に輝きます

[日付] 十一月二十一日
[発信者] 源城内 王鳳祥
[宛名] 大同県第四区馬軍営林 李海山
[本文の内容] 近頃国難の為赴いた友達の事が思ひ出されて仕方がない異族の暴力よりなる民族的屈辱下に甘んじて居るより苦しくとも崇高なる救国の信念を抱いて行った良国、徳海等の諸友は何れ丈幸福であらう

[日付] 十月二十三日
[発信者] 甘粛省愛陽県西夅鎮 候振興
[宛名] 河南省滑県城東七十五里老安鎮西北候小 候青仁
[本文の内容] 僕は甘粛省慶陽県西夅鎮陸軍第九七師二八九旅立七七団二営四連に入隊し現に服務中である身を国に捧げた以上は決して生きて帰らない覚悟です我国が滅亡の途を辿りつつあるを見て躊躇しておる時機ではない粉骨砕身手柄を樹てるから安心せよ

[日付] 十一月十五日
[発信者] 寿県張秋鎮新開街一七軍事委員会政治部直属第三政治大隊 叔父 晨
[宛名] 河南魯山県省立商邱高等中学校 郭同●
[本文の内容] 小生等黄河渡河以後各地の霍乱病は非常に流行し敵人は多くの漢奸をして井戸中に毒薬を投入せしめたる事は常に見たる処にして漢奸の害は敵人より甚だし我等今回通過せる地点には敵の屠(?)て来れり処もあり又来たらざる地点もありたるも人民の敵を恨み居る事は各地共激しかりき

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方参特報綴 昭和14年1月