改憲派の主張例
20世紀前半の日本人は、そのアメリカと戦争をして敗れ、足かけ8年間の占領期間中に完全に教化されてしまい、憲法も皇室典範も教育制度も歴史観もアメリカ主導で作られ、かつまた、それを押し付けられて、いまだに、それを改革する気概さえ持っていない。明治大学名誉教授・入江隆則氏 産経新聞2012年4月19日「正論」

しかし、実は憲法の天皇条項と9条は当時の幣原喜重郎首相の発案であることが、50年近く前に証言されていたようだ。以下昭和39年憲法調査会資料とのこと
(インタビュアー よく分りました。そうしますと憲法は先生の独自の御判断で出来たものですか。一般に信じられているところは、マッカーサー元帥の命令の結果ということになっています。もっとも草案は勧告という形で日本に本に提示された訳ですが、あの勧告に従わなければ天皇の身体も保証できないという恫喝があったのですから事実上命令に外ならなかったと思いますが。)

この情勢の中で、天皇の人間化と戦争放棄を同時に提案することを僕は考えた訳である。・・・この構想は天皇制を存続すると共に第九条を実現する言わば一石二鳥の名案である。もっとも天皇制存即と言ってもシムボルということになった訳だが、僕はもともと天皇はそうあるべきものと思っていた。・・・この考えは僕だけではなかったが、国体に触れることだから、仮にも日本側からこんなことを口にすることは出来なかった。憲法は押しつけられたという形をとった訳であるが、当時の実情としてそういう形でなかったら実際に出来ることではなかった。そこで僕はマッカーサーに進言し、命令として出してもらうように決心したのだが、これは実に重大なことであって、一歩誤れば首相自らが国体と祖国の命運を売り渡す国賊行為の汚名を覚悟しなければならぬ。松本君にさえも打ち明けることのできないことである。幸い僕の風邪は肺炎ということで元帥からペニシリンというアメリカの新薬を貰いそれによって全快した。そのお礼ということで僕が元帥を訪問したのである。それは昭和二一年の一月二四日である。その日僕は元帥と二人きりで長い時間話し込んだ。すべてはそこで決まった訳だ。

(インタビュアー 元帥は簡単に承知されたのですか。)
マッカーサーは非常に困った立場にいたが、僕の案は元帥の立場を打開するものだから、渡りに舟というか、話はうまく行った訳だ。しかし第九条の永久的な規定ということには彼も驚いていたようであった。僕としても軍人である彼が直ぐには賛成しまいと思ったので、その意味のことを初めに言ったが、賢明な元帥は最後には非常に理解して感激した面持ちで僕に握手した程であった。元帥が躊躇した大きな理由は、アメリカの侵略に対する将来の考慮と、共産主義者に対する影響の二点であった。それについて僕は言った。 

(インタビュアー 天皇陛下はどのように考えておかれるのですか。)
僕は天皇陛下は実に偉い人だと今もしみじみと思っている。マッカーサーの草案をもって天皇の御意見を伺いに行った時、実は陛下に反対されたらどうしようかと内心不安でならなかった。僕は元帥と会うときはいつも二人きりだったが、陛下の時は吉田君にも立ち会ってもらった。しかし心配は無用だった。陛下は言下に、徹底した改革案を作れ、その結果天皇がどうなってもかまわぬ、といわれた。この英断で閣議も納まった。
http://kenpou2010.web.fc2.com/15-1.hiranobunnsyo.html
このように幣原首相の主導・発案だったと本人が述べていたわけだ。マッカーサーは9条についてむしろ躊躇していたことも分かる。


また当時の世論もその2点を支持していたようだ。 以下毎日新聞世論調査より
草案の天皇制への賛否  支持:1702 85%   反対:263 13%   不明:35 1.7%
戦争放棄の条項を必要とするか 必要あり:1395 70%   必要なし:568 28%
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/shukenshi002.pdf/$File/shukenshi002.pdf (p46~47)


当時の各政党も共産党以外は、新憲法案に賛成しているという記録がある。
外務省総務局昭和21年3月18日「憲法草案要綱に対する内外の反響」 
      
○自由党 
天皇制、人権尊重、政治機構の民主化、戦争放棄の諸点に付同党公表の憲法草案の原則と一致して居るものとして原則的賛成の意を表し、今後の若干の修正に依り日本国民に一層「コンヂニアル」なものとし度き旨を主張している  
○進歩党 
原則的賛成の点で自由党と大体同じ調子であるが特に戦争放棄の規定の条文化に際し、 国際的現実を無視せざる様慎重なる態度を要望し進んで世界の憲法に同種の規定の確立を希望している
○社会党 
今次草案の進歩的正確に特別に好感を示しているが・・・ 
○協同党 
大綱的に賛成であるとなし、・・・ 
○共産党 同党は今次の草案に対し否定的批判を行いつつある唯一の党である。・・・ 
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/096/096_003l.html