リフレ

各国中銀関係者らと逆のことを言うリフレ派・高橋洋一氏

まず高橋洋一氏
原油価格が高騰したといっても、それが消費者物価の上昇につながるわけではありません。・・・前述のように、一般物価は基本的には世の中のお金の総量で決まります。
「この金融政策が日本経済を救う」光文社新書 2008年12月20日初版第1刷発行(p75・76)

一方各国中銀関係者は、原油価格の物価への影響を認めているようだ
イタリア中銀総裁
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、ビスコ・イタリア銀行(中央銀行)総裁は15日、原油安はユーロ圏のインフレ率をさらに押し下げるとの認識を示した。

カナダ中銀
カナダ中銀が利下げ、原油安の影響懸念 2015年01月22日(木)11時55分
カナダ銀行(中央銀行)は21日、政策金利を1.0%から0.75%に引き下げた。政策金利の変更は2010年9月以来。原油価格の急落に伴い、成長率とインフレ率目標の達成が脅かされているとして、必要であれば追加緩和をする準備があることも示した。
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2015/01/142041_1.php

英中銀委員
 1 月開催分のイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)議事録が公表され、9 対 0 で金融政策の据 え置きが決定されたことが明らかになった。昨年 8 月以降に利上げを主張していたウィール、マカファティ両委員が原油価格の大幅下落で低インフレが長期化するリスクがあるとし、現行の金融政策維持を支持した。

欧州中銀理事
12月9日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のプラート理事は、原油安がユーロ圏のインフレ率をマイナス圏に押し下げる可能性があるとの見解を示した。
 
米FRB議長も「影響は一時的」と控えめながら原油価格のインフレ率への影響を認めている。
イエレンFRB議長は、「負債を負った企業が、原油価格の下落によって痛手を被ることは、重大な懸念事項ではない。原油価格の下落の影響は、米国の経済にとって差し引きでプラスになる可能性があり、総合インフレ率への影響は一時的なものである」と述べている。

そして日銀
<金融政策決定会合>「物価上昇率2%達成」に原油安で陰り
毎日新聞 1月21日(水)20時19分配信
日銀は21日の金融政策決定会合で、経済と物価の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を見直し、2015年度の消費者物価指数(生鮮食品と消費増税の影響を除く)上昇率を1.0%に大幅に下方修正した。
新たに示した物価上昇率見通しは、14年度が0.9%(昨年10月時点は1.2%)、15年度が1.0%(同1.7%)。だが、日銀は下方修正の要因を「ほぼすべて原油価格の下落」と説明。15年度はエネルギー価格の下落で物価が0.7~0.8%程度押し下げられるとの試算も公表した。

この様に日本も含めた各国の中銀(関係者)、は原油価格が物価に影響することを認めている。では原油安と物価は関係ないと主張する高橋洋一氏と、関係あるとする各国中銀(関係者)と、どちらが正しいだろうか。

そしてなぜ日本には、高橋洋一氏の方を信じる人が多いのだろうか。それは日本の経済学者の責任でもある。 



リフレ派・高橋洋一氏「一つの物価が下がれば他の一つの物価が上がる」論の間違い

■高橋洋一氏「一般物価水準と相対価格、一般物価と個別物価は別」「一商品が下がれば他の一商品が上がる」

高橋洋一「ニュースの深層」
浜田宏一教授が圧勝した野口悠紀夫氏との議論!アベノミクス実現で「1ドル=120円、日経平均1万6000円」も見えてくる2013年01月21日(月)

 ……野口氏の報告は、インフレ目標を否定した上で、デフレは中国からの輸入のためで、日本の実質賃金が低下していくというものだった。要するに、安い輸入品が国内に入るので、競合品価格が下がり、デフレになるというわけだ。これに対して、浜田氏は、野口氏の議論で一般物価水準と相対価格を混同している、デフレというのは一般物価水準の話であって相対価格の話でないとコメントしている。同じコメントが他のパネリストであった深尾光洋・慶応大学教授からも出された。

 この浜田氏らの反論は、少し経済学の知識が必要だ。ノーベル受賞の経済学者フリードマンががしばしば用いる論法だが、ある特定商品の個別価格の低下は、所得に余裕をもたらし他の商品への支出インセンティブとなり、他の商品価格が上がるのだ。このため、個別物価の平均になっている一般物価は、個別物価が下がっても必ずしも下がるとはいえないのだ。もちろん価格の伸縮性は商品によって異なるので、ある商品価格の下落と他の商品価格の上昇が完全に相殺されることはないが、一つの商品の動きだけをみているだけでは十分でないということは注意すべきだ。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34650


■どう間違いか
(1)エネルギーや土地の価格下落(上昇)は全商品価格の下落(上昇)圧力となる
 たとえば原油という一商品の価格下落は、光熱費輸送費を原価とする全商品サービスの価格下落につながる。つまり「一商品が下がれば他の一商品が上がる」というのは間違い。またエネルギーだけでなく地価も同様。地価が下がれば地代家賃を原価とする全商品サービスの価格下落につながる。逆にエネルギーや土地の値段が上がれば、それらを原価に含む全商品サービスの価格上昇につながる。
 つまりリフレ派はエネルギー・土地のような「他の商品価格に大きく影響する一商品」が頭から抜けている。 あるいは「ある一商品価格が他の商品の原価になる」という考え方が頭から抜けている。

(2)「一商品価格下落=当該業界の人は所得に余裕が無くなる」の要素を忘れている
たとえば地価が下がれば不動産など土地関連業界が縮小し、その業界内の労働者の賃金・購買力が下がる。
つまり土地不動産業界の人の「所得に余裕が無くなる」。これを高橋氏はどうやら忘れている。だから「ある特定商品の個別価格の低下は、所得に余裕をもたらし」などと言ってしまう。


「一般物価水準と相対価格は違う」「一商品が下がれば他の一商品が上がる」「一般物価は、個別物価が下がっても必ずしも下がるとはいえない」というのはリフレ派の根本主張の一つだが、上の通り間違っているだろう。

ご本尊クルーグマンを曲解・無視するリフレ派・アベノミクス

■リフレ派のご本尊クルーグマンは日本の人口問題を何度も指摘。
"Japan's Trap"(日本がはまった罠 1998年5月)

(日本の)労働力減少の見通しは、投資の期待利回りを下げる。

It’s Baaack! Japan’s Slump and the Return of the LiquidityTrap(復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲 1998年)

でも確実なのは、日本の長期的な成長は完全雇用のもとであっても、人口要因で低下せざるを得ないということだ。1980 年代を通じて、日本の雇用は年率 x.x パーセントでのびた∗3。でも、労働力人口はいまやピークを超えてしまった。今後 xx 年で、労働力人口は年率x.x パーセントで減少する(OECD 1997) し、――もし人口学者の人口推計が正しければ――その後 xx 年にわたっては x.x パーセントという驚異的な速度で減少が進む∗4。本論文の第一部における投資と q の議論からもわかるように、こうした人口減少の見通しは、ほかのものさえ等しければ、将来の q の期待を引き下げて、したがって現在の投資も引き下げることになるはずだ。
(中略)
さて、人口学者の予測では、来世代の人口はいまの世代の人口より小さくなると予測されたとしよう。だから労働力も、そして(労働の需要が弾性的だとして)土地の実質価格も下がる。もしそうなら、土地はプラスの限界生産を持つけれど、土地への投資の期待収益は、原理的にマイナスになり得る
 
"The Japan Story"(2013年2月)

日本は財政赤字を長年にわたってつづけてきたけれど,日本の経済的実績は表面的に見るとじつに残念なものだという点だ.ここはどう考えたものだろう?ぼくの答えは2点からなる.第一に,日本の経済成長というか成長しなさ加減について論評しようってときには,人口動態を考慮した方がいい.日本の出生率は低いし,移民流入も少ない.このため,日本の人口は急激に高齢化してきているし,労働年齢人口は減少してきている.……日本はこの20年の多くを流動性の罠にはまったまま過ごしてきた.……なんで日本はこんな状況になってるのって? 1980年代バブルから持ち越された債務はたしかにこのプロセスの起点にはなった.だけど,人口動態もこれに寄与していると示唆するのは理にかなっている.なぜなら,減少中の労働年齢人口によって投資への需要が低く押さえ込まれるからだ.

クルーグマン教授、日本の人口減少を問題視-低成長の要因(2013年2月)

2月6日(ブルームバーグ):ノーベル経済学賞受賞者でプリンストン大学教授(経済学)のポール・クルーグマン氏は、日本の低成長は人口不足の結果だと述べ、労働年齢人口の生産の伸びは「さほど悪くない」との見方を示した。

■内閣府報告書も人口と期待インフレ率の相関を明言
平成23年度年次経済財政報告 内閣府(2011年7月)

生産年齢人口の将来予測と期待物価上昇率にも正の相関が認められる。

■ところがご本尊の言葉を無視曲解して「人口は関係ない」と言い張るのが日本的リフレ派
安倍晋三首相

安倍晋三首相は7日午前の衆議院予算委員会で、デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられるとの認識を示した。民主党の前原誠司委員の質問に答えた。人口が減少するなかで、構造問題を解決しないとデフレは脱却できないのではないかとの質問に、安倍首相は「人口減少とデフレを結びつける考え方を私はとらない。デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる。人口が減少している国はあるが、デフレになっている国はほとんどない」と答えた。(2013年2月7日)

浜田宏一氏
 
「人口構成がデフレの要因だという日銀の愚かな責任逃れ」『アメリカは日本経済の復活を知っている』より第3回(2013年1月20日)
 
日銀は「人口がデフレの要因である」ことも主張したいらしい。ところが、人口をデフレに結びつけるのは、理論的にも実証的にも根拠のないものだ。もちろん人口は成長の要因にはなるが、実質生産に、人口あるいは生産年齢人口が影響するのは当たり前のことである。

 しかし、貨幣的現象である物価、あるいはデフレに人口が効くというのは、経済の解剖学すなわち「国民所得会計」から見ても、生理学すなわち「金融論」から見ても、まったく的外れな議論だ。医学の発達した社会で、床屋での素人談義で患者の診断と治療法を決めようとしているのが日銀の姿なのだ。……人口構成がマクロ経済に関係があるのはもちろんだが、現在の経済学では、デフレの原因とは決して結びつけることはできない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34617 


■なぜリフレ派は頑なに「人口は関係ない」としたがるのか。その理由の推測

(1)人口が関係あるとなると、少子化対策を失敗した自民党の責任となる。「デフレは自民党の責任ではなく、実は日銀のせいだったのです」という責任転嫁。だからリフレ派は自民・元自民とその周辺が多い。

(2)経済学者としては、人口が原因などという高校生でも言えそうなことは言いたくない。 経済学はもっと高度なものだというプライド。

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