三月十一日 自一〇、〇〇至一二、二〇 第九十四回連絡会議
 
議題
一、研究問題第三「初期作戦の実績と予想との差異」(決定) 
二、時局に伴ふ猶太人対策
三、総理演説腹案

第一議題
(略)

第二議題
一、本件は従来外資導入又は米英との関係維持等の必要より待遇を緩和しありしが今日は五相会議決定当時とは情勢一変しあり、元来猶太人は悪い奴故今後之を厳重に取締らんとする趣旨にして其の旨外務側より説明あり
二、要項第三項末尾「之を好遇するも」は好遇するに非ず之を厳選して適当の待遇を与ふべきなりとの意見あり、之に同意し修正決定
右に関し利用すべき猶太人とは如何なるものなりやとの質問あり之に対し「例へば開濼(?)炭鉱支配人の如きものなり」との応答ありしも少々利用し得べきものは敵側よりも同様利用せられあるべしとの意見にて厳選を要することとなれり
三、説明末尾の部分も無国籍猶太人は其の取扱を厳重にせざるべからずとの意見強く原案の修正決定せり
「註」無国籍人に関連し左の如き意見あり
(イ)蘭印の俘虜中蘭人は母国無きを以て将来俘虜交換の材料とはならざるべきも之を現地に置くことは将来独逸側の利用する所となるの虞あり、さればとて何処に帰すべきやも問題なり、全●的に検討を要す(俘虜以外の蘭人共)
(ロ)蘭印軍●令官の取扱に関し現地軍の意見は少し甘過ぎざるや、直に電●せよとの陸軍大臣よりの意見ありしも同人が混血児なりとか「インドネシヤ」人なりとかの説あり若し然りとせば利用すべきなりとして参謀次長より応答し置けり

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レファレンスコードC12120259400(5枚目)
大本営政府連絡会議議事録 其3 昭和17年1月10日~18年1月30日
猶太人は悪い奴 - コピー

で決まったのがこれ
「国家機密」印
時局に伴ふ猶太人対策
昭和十七年三月十一日 連絡会議決定

大東亜戦争発生に伴ふ猶太人対策は左記要綱に基き実施するものとす。

要綱
一、日満支其の他我が占領地に対する猶太人の渡来は特殊の事由あるものを除き一切之を禁止す
二、日満支其の他我が占領地に居住する猶太人は原則として当該国籍人に準じ取扱ふも猶太人の民族的特性に鑑み其の居住営業に対し監視を厳重にすると共に其の敵性策動は之を排除弾圧す。
三、猶太人中帝国に於て利用し得るもの(同盟国に於て利用し得るものの中帝国の施策に反せざるものを含む)は之を厳選し之に適当なる待遇を加ふるも猶太人民族運動を支援するが如きことは一切之を為さず。
備考
 昭和十三年十二月六日五相会議決定猶太人対策要綱は之を廃止す。

説明
帝国の従来執りたる対猶太人政策の大綱は昭和十三年十二月六日付五相会議決定による猶太人対策要綱に示され居る処右対策は猶太人に対し好意的取扱を為すことに依り外資導入或は対英米関係悪化回避に資せんとする趣旨に出でたるものなり。然るに今や大東亜戦争等の発生により情勢の根本的変化を見るに至り猶太人利用による外資導入或は対英米関係打開の如きは全く無意義となりたるのみならず我が盟邦たる独伊は夙に排猶政策を執り殊に独逸に於ては本年一月一日以降海外在住猶太人のドイツ国籍を一斉に剥奪するの措置に出でたるを以て我方としては猶太人の取扱に付第三国関係を格別顧慮するの要なきに至れり。他方占領地の拡大に伴ひ我が権力下に在る猶太人の数は漸次増加の傾向にあり此等猶太人に対しては其の民族的特性に鑑み至急適当の警戒措置を執るに非ずんば占領地行政上不測の禍を残すの惧なしとせず。然れども全面的に猶太人を排斥するが如きは八紘一宇の我国是に副はざるのみならず必ずや英米の逆宣伝に利用せらるべきに付原則として猶太人は当該国籍を有するものに準ずる取扱を為し元独逸国籍猶太人は之を無国籍人と看做し白系露人等に準じ取扱ふも(無国籍人の第三国国籍取得を容認せず)特に厳重なる監視を為すものとす。

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占領地行政に関する決定綴 昭和16年11月~昭和18年3月


その他ユダヤ関連資料
戦時月報(軍政関係)
昭和十八年五月三十一日 馬来軍政監部

警務
一、治安
2 猶太人の抑留
在昭猶太人中には反日悪想を有し占領地防衛並に軍政施行上障害多きものあるに鑑み将来是等の秘密戦的策動の根源を絶滅すべく四月上旬百余名を抑留せり
(※昭=昭南。シンガポールのこと)

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戦時月報(軍政関係) 昭18.4.19~18.7.31

昭和十七年十一月二十七日
「極秘」印
別冊第一 
馬来に於ける治安上の一考察
25A軍政監部警務部

第一 治安判断
第二 治安判断の資料
四、各民族の動向
1、中立及第三国人
中立及第三国人は其総数九五六名猶太人大多数を占む。之等は表面軍政に従順なるも一部に於ては旧英政府時代の自由主義的享楽思想乃至は東亜民族蔑視観念強く物資不足物価高に依る生活水準の低下社会的地位の転落等に対する不平不満言動あり。殊に民族的特性上猶太人動向には注意を要するものあり
2、華僑
馬来総人口五、三九八、六〇〇人中華僑二、三五三、九〇〇人にして総人口の四四%を占め人口的に経済的に他民族を凌駕し圧倒的勢力を有す。
一般華僑は表面軍政に従順対日献金昭南証券の購入生産建設各部門に・・・

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馬来及びスマトラに於ける治安上の一考察 昭和17.11

陸亜密電
次官より岡部隊総参謀長
信部隊参謀長
仏印大使府陸軍随員宛電報
(電文別紙の通)

在仏印敵国人の処理に就きては一応仏印側をして抑留又は集団生活せしめ日仏協同して之を監視する如く交渉し仏印側が右に応ぜざる場合は日本軍にて抑留又は集団生活せしめて仏印側をして黙認の態度を採らしむる如く又中立国人に対しては其中猶太人は勿論反枢軸的色彩を有するものの動静監視及び新規入国の制限等に関し仏印側をして万全を期せしむる如く芳澤大使より現地陸海軍と協議の上総督に交渉を開始すべき旨大東亜大臣より芳澤大使に訓(?)令せるに付南総参一第八七三号の別紙第一項の処置に方りては右芳澤大使の施策と緊密に連絡を保ちつつ行はれ度

通電先 岡、(大使府随員、信は参考)
昭和拾七年十二月拾九日

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昭和17年 「陸亜密大日記 第62号 2/3」

「秘」印
憲校教第三号
陸軍憲兵学校仮教則に関する件申請
昭和十三年一月十七日 陸軍憲兵学校長 島本正
陸軍大臣 杉山元殿

首題教則別冊の通り制定致度に付認可相成度陸軍憲兵学校令第五条に基き申請す
追而教育は支那事変に付特に左記事項に関し注意実施す

左記
一、支那及支那軍隊並支那人に対し正当なる認識を把握し情勢判断を誤らざること
二、支那事変の原因特に「コミンテルン」及猶太人の活動並に事変の長期性
・・・

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大日記甲輯昭和13年

「極秘」印
自昭和十六年 至昭和十七年九月
昭和十六七年度執務報告(第三課関係)
亜米利加局

第三章 外国人の入国、滞在及退去並に旅行に関する取締
第九節 本邦渡来外国人の査証取扱方針
四、戦時下敵国人及猶太人に対しては原則として査証又は渡航証明書を発給せざる取扱方針なり
然れども戦時中我方に有利に利用し得る猶太人の入国迄も拒否する必要なく又敵国人中親日的言動ありたりとて帰印を拒絶せられたる印度人又親が出生届若くは国籍保留届をなさざりし為戸籍の記載なきもの、日本国籍を有せざる米国生れの二世、又は敵国人と婚姻し日本国籍を喪失したる婦女等に対しても一律に敵国人なるの故を以て全面的に入国を禁止するは八紘一宇の我国是に副はざるものあるに鑑み内務省とも協議の上真に事情止むを得ざる敵国人に付ては其の入国を特許することとせり。但し右は平時に於ける入国とは其の趣を異にするを以て此種敵国人渡来者に対して在外公館長は敵国旅券に査証を付与せず別に上陸地地方長官宛無国籍人に対し発給する渡航証明書と大体同様の事項を記載したる本人紹介状を発給せしむることとせり。

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帝国議会関係雑件/説明資料関係 第八巻

「極秘」印 
方軍参密第二七五号
北支に於ける猶太人取扱振りに関する件通牒
昭和十三年十一月二十一日 北支那方面軍参謀長 山下奉文

独伊両国より放逐せられたる猶太人が大挙東洋方面に移住し来らんとするの形勢あるに鑑み当軍の之が取扱振りを別紙の如く定められたるに付依命通牒す

別紙
一、方針
独伊両国より放逐せられて大量来るべき猶太人の北支移住は其思想的傾向、経済的影響を考慮するのみならず独伊の〔ママ〕思慮に入れ之を拒否すること
但従来北支に在りし不良ならざる猶太人迄も之を排斥するものに非ず。

二、要領
1 右方針は一応東京に爾後報告すると共に関東軍に通知し満洲国を通過するものをして北支方面に来らしめざる様要請す。
2 現地日支官憲には軍特務部憲兵隊司令部等より右方針を通達して陸上よりすると海上よりするとを問はず猶太人の北支への入国を拒否せしむ特に秘密裡に入り来るものに対し注意を要す。 
3 一般的説明特に従来よりの在北支猶太人に対しては適当に拒否の理由を説明し以て全般的猶太人の排斥には非ざる旨を明らかならしむ。
4 独伊両国より抗議ありたる場合には拒否の合理性を強調す。

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昭和13年 「陸支密大日記 71号」

秘電報
甲方参二電第二八八号
昭和一三、一一、二九 
一一、二九、〇、三〇発 二、二六著
次長次官宛 甲集団参謀長

甲方参二電第二六四号の如く軍は独伊両国より追放せられたる「ユダヤ」人の大量北支移住は目下の情況上之を拒否することとし極力各種の手段を講じつつあるところ在天津独乙領事は当軍の申し入に対し「ユダヤ」人は追放せられたる者にあらずして単に生活の必要上移住せんとするものにして以前独乙国籍を有(「有」右横に「?」)し独乙領事としては日本側の圧迫に対して之を保護(「保護」の右に「?」)せざるべからずとて独国が嫌で追放するものを独国々内より更に不安定なる北支に押し付けんとするは甚だ怪しからぬことと思考するを以て在京独国大使若しくは在独大島大使をして独国政府に対し追放猶太人を日本軍占拠地域たる北支に向て渡航せしめざる如く厳重申入る様手配せられ度、尚関東軍及中支派遣軍に対しても極力当方に向て出発せしめざる様要請しあるも満洲方面より来るもの後を絶たず中央部よりも指示願度(終)

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昭和13年 「陸支密大日記 71号」

第2次大戦中満州に輸送されたユダヤ人をめぐる日独関係について
欧西一
昭46、2,8
本件についてさらに調査せる結果次のとおり

1、昭和13年から昭和20年までの欧州からの来信、ユダヤ人問題ファイル等を調査したが、焼失したものを除き現在存在せる資料の範囲内において、当時ドイツ側からユダヤ人問題に関する日本の態度について特に具体的に申し入れのあった事実は確認できなかった。
2、本件調査中判明した関連事項で興味あるもの何(?)等参考までに次のとおり。
(1)昭和13~14年ごろ、欧州等から難をさけて陸路又は海路で2~3万人のユダヤ人が上海に流入した。これに対して日本政府は、人種上の理由をもってユダヤ人を特に差別取扱いすることはしなかったが、収容面での困難、及びドイツとの関係などで政治上望ましくないとの考えから、ドイツ側にユダヤ人の輸送をとりやめるよう昭和13年、及び昭和14年の2回にわたり申し入れを行なった事実がある。

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「秘」印
昭和十四年一月十八日 於回教及猶太問題委員会
上海猶太の現状と対策に関する私見
(大連、青島、上海現地調査報告速記)
軍令部 犬塚大佐

一、調査摘要
二、満洲猶太現状
・・・唯過般外務省から船会社に猶太人を寄こさぬやうにといふ指令がありました結果切符関係が間延びして、お前は猶太人かどうかといふことを聞く、之が外国人を刺戟し又猶太人を刺戟して日本は猶太排撃をやり出したといふ印象を与へて居る、斯ういふことは矢張り現地の最高の取締官憲に、例へば大連ならば特務機関に言って呉れると適当にやり得たのではないかと特務機関長が洩らして居りましたので御参考迄に申上げます。

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レファレンスコードB04013210300(61枚目)
民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

「極秘」印
六月十一日上海来電
現地猶太問題委員会の決定事項として左記の通り関係方面へも御通達相成度し
現地の状況並に主なる関係方面への意嚮に鑑み上海に於ける猶太避難民処理の根本的対策決定迄当分の間左の処置を執る事を必要と認む

(イ)上海に向け現に航行中なるものを除き将来避難民は日本軍警備区域に関する限り上陸を禁止
(ロ)猶太委員会及独伊現地官憲に右措置を通報し上海向け避難民は今後送(右横に「?」)付せざること然るべき旨を説示す
(ハ)必要に応じ在独帝国大使より独逸政府に対し同趣旨を申入る
(ニ)日本船舶をして当分の間避難民を輸送せざる様措置せしむるものとす 

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レファレンスコードB04013210300(84枚目)
民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

昭和十四年一月十八日 於回教及猶太問題委員会
日満支外人特に猶太避難民入国問題に関する調査報告
隈部亜米利加局第三課長

次に満洲国に移ります。・・・猶太人に対しては日本と大体同一の措置を採って居ります。唯伯林に在る満洲国の公館でで〔ママ〕は猶太人は一切入れぬといふ建前でやって居られるといふ様な報告もありますので斯ういふ点は多少遺憾の点があるのぢゃないかと存じました。かかる点に就ては今後共矢張り大使館及軍側に於て満側と十分連絡せられる必要があるのぢゃないかと参事官にも述べて置いたのであります。

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レファレンスコードB04013210300(78枚目)
民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

「秘」印
昭和十四年五月二十六日

三、猶太避難民将来に関する永久対策
一、上海新都市計画に関連し猶太区を設定する件
之に依り上海猶太財閥をして新都市建設に協力せしむ、但し右一の選定に就ては将来民族的、国防的並に新上海が発展上の見地より慎重なる研究を要す

四、今後の猶太避難民取扱要領
一、欧州よりの猶太避難民を我勢力圏内に入る事を許容するとせば之を独伊の送付するに委せ彼等の流入を無制限に放置するは適当ならず、故に帝国は満洲、北支、中支、等に先づ本年度に於て移住を許容し得べき数を限定し之を独伊等の猶太追放国並に猶太避難民委員会に通告すると同時に我出先日満官憲は所定数の猶太避難民を職業技術等、各我所要数に応じ選定救済の意味に於て之に査証を与へ堂々入国せしむるを有利とす
二、旧支那の査証を所持し上海等に入国し来るものは我に於て制限し得ざるを以て独伊並救済委員会をして制限せしむ

説明
一、目下猶太避難民を見るに例へば独逸飛行機製作所に活動せる優秀技術者或は世界的学者等は英、米諸国に選定奪取せられ而も反日思想を抱ける有害記者等混淆して無制限に流入し来る状況なり、斯くては極東に来たる猶太避難民は一般に質的低下を
来し我が極東新建設に有利ならず、即ち或一定限度の猶太移民を許容するものとせば其の質に於て良好にして而も我に必要なるものを選定獲得するを賢明と思考す

之が為我新建設の為め必要なる専門技術家の数を予め調査し置くの要あり

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レファレンスコードB04013210400(3枚目~)
民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

「極秘」印
上海猶太避難民応急対策(陸海外現地案最後案)
昭和十四、七、一

方針
猶太避難民に対する根本的対策確定迄の差当りの措置として左記要領に依り日本軍占領地域内に避難民の殺到するを阻止するものとす

要領
三、今後新たなる避難民の日本軍警備地域内に於ける居住及営業は暫く禁止すべき旨を在上海独、伊官憲、猶太避難民委員会等関係の向に通告す。
右実施に当りては外国側の日猶又は日独離間宣伝に利用せられざる如き措置を講ずるものとす
四、現に上海に向け航行中なるものを除くの外将来るべき避難民の日本軍警備地域内に進入するを禁止し新規居住又は営業する者あらば警備地域外に退去せしむ
右取締は第一項名簿に基き之を行ふも其の具体的方法は別に定む。但し成る可く避難民委員会を利用するものとす
当分の間日本船舶をして今後避難民を運送せざる様措置せしむ
五、右現地の措置と併行し東京に於て独、伊両国代表に対し極秘裡且懇談的に将来避難民を上海其他日本軍占領地帯に送付せざる様交渉す


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レファレンスコードB04013210400(21枚目~)
民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

「極秘」印
昭和十四年七月十八日
回教及猶太問題委員会
幹事会
上海猶太避難民処理に関する件
二、申合事項
(一)上海猶太避難民応急対策に付て
幹事会は上海猶太避難民応急対策に付調査員原案を基礎とし別紙案の通意見一致せり
幹事会は右案が現地関係機関の案として各中央に稟請し実施するに適するものと認定せり
(二)猶太避難民地区の設定に付て
(イ)猶太避難民を収容する為特に一定地区を設くるの必要に付ては現地機関に於て略異見なきも該地区の位置に付意見一致せざるに鑑み此点に関し更に現地に於て調査を行ふ要あると認む
右調査に当りては猶太避難民の利用価値殊に猶太避難民に対する工作の支那事変処理に対する効果を考慮し且猶太人に逆用せらるることなきやう注意を加ふるを要す


(別紙)
上海猶太避難民応急対策案
昭和十四年七月十三日

方針
猶太避難民に対する根本的対策確定迄の差当りの措置として左記要領に依り日本軍占領地域内に避難民の殺到するを阻止するものとす

要領
三、今後新たなる避難民の日本軍警備地域内に於ける居住及営業は特別の場合を除き暫く禁止すべき旨を在上海独、伊官憲、猶太避難民委員会等関係の向に通告す
右実施に当りては外国側の日猶又は日独離間宣伝に利用せられざる如き措置を講ずるものとす
四、現に上海に向け航行中なるものを除くの外将来るべき避難民の日本軍警備地域内に進入するを禁止し新規居住又は営業する者あらば警備地域外に退去せしむ
右取締は第一項名簿に基き之を行ふも其の具体的方法は別に定む
但し成る可く避難民委員会を利用するものとす
当分の間日本船舶をして今後避難民を運送せざる様措置せしむ
五、右現地の措置と併行し東京に於て独、伊両国代表に対し猶太避難民を上海其他日本軍占領地帯に当分の間出来得る限り送付せざる様極秘裡且懇談的に勧告す

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民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

「極秘」印
昭和十四年七月七日
上海に於ける猶太関係調査合同報告
陸、海、外務関係調査官 
  陸軍歩兵大佐 安江仙弘
  海軍大佐 犬塚惟重
  領事 石黒四朗

緒言
一、欧州避難猶太人の居住区設定に関する基礎的研究並調査
二、現状に於て在上海英国系猶太財閥主脳者を英国依存より日本依存に転向せしむる為に執るべき具体策に関する研究並に調査(要綱)
三、猶太系資本誘致に関する研究並調査
四、在支猶太勢力を利用し米国世論、対極東外交及米国大統領周囲を親日的若くは中立的ならしむる具体策に関する研究並に調査
結論

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民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

二、警備の見地よりする避難猶太人対策
昭和一四、六、五 
上海警備司令部

方針
一、軍は八紘一宇の宏図に律由し避難猶太人の来滬を拒否せずと雖極力之が急激なる増加を避くるを要す
二、陸軍警備地域内に於ては当分の間避難猶太人の居住営業を禁止す。将来之を許容する場合には一定地区に限定し之を集結収容す

対策(概ね列記の順序に施策す)
一、外交交渉に依り避難猶太人の来滬を一時中止せしめ已むを得ざるも之を制限す
本件は法規に捉はるるときは困難なるべきも万般の方途を講じ其の目的達成に努むるを要す
二、陸軍警備地域内には概ね新支那政権樹立し帝国政府之を承認するに至るの時期迄(此の時機には防共盟邦亦之を承認すべし)避難猶太人の居住及営業を禁止す。現実を問題としても臨時収容所として充当し得べき建築物皆無なり
七、現地陸海軍当局は極宜の時機に於て軍は八紘一宇の宏図に律由し避難猶太人来滬を拒否せずと雖も厳に日支両国官憲の法規を格守し就中防共の精神を尊重する者に限り居住及営業を許可する旨佈告す
八、避難猶太人は努めて新支那の国籍に転移せしめ第三国人として治外法権の特権を享有せしめざるを要す
九、避難猶太人居住地区の市政は上海市政府をして之を管掌せしめ新に猶太人租界を現出することなからしむるを要す
単なる居留民団の如きものは此の限りにあらず


猶太人対策に於て其財閥を利用し経済建設を促進せんとする論者少しとせず。然れども斯の如きは聖戦の真意義を滅却するのみならず近き将来に於て欧米諸国が現に嘗めつつある苦杯を帝国自ら享受するに過ぎず。殊に其片鱗をも示さんか彼等は帝国経済力を軽視し長期作戦継続の力に疑念を挟むに至ること必然なり。故に軍は終始毅然として斯の如き眼前の利権に超越するの態度を賢持するのみならず官民を指導するを要す。若夫れ此根本理念に於て一歩を誤らんか幾万の護国の英霊と巨億の国帑とは断じて東亜新建設の礎石たる能はず。

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民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

三、猶太避難民処置案に関し安江大佐の中支派遣軍司令部との打合せ事項
(六月七日於南京)
軍側
吉本参謀長
第橋第四課長
公平第二課長代理
其他関係幕僚

軍は左記の意見以外本案に同意す
二、新上海の復興建設は新支那政府並に日本の自力を以てしては到底不可能なり。故に猶太人をして協力せしむるを適当と認む、之が為には浦東地区よりは寧ろ新上海予定区域に地域を選定して猶太区を与へるを要す、・・・

右に対する安江大佐の所見
三、新上海の復興及新建設等に猶太側を協力せしむるは唯単に在上海の猶太財閥を対照とするものにあらず、全世界猶太財閥特に其の中心勢力たる紐育猶太財閥を対象とするを本旨とす
四、猶太民族に安住地を与ふるに当りては最も有効に此の機を利用する着意あるを要す、即ち
1、米国輿論の好転
2、借款投資の容易
2、欧米猶太人の親日
4、極東猶太人の我国に対する絶対協力 

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民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻

(別紙)猶太避難民問題対策に関する意見
昭和十四年六月二十一日
興亜院華中連絡部

左記の外過般提示の海軍案に同意す
一、上海新都市計画は同地方に日支強度結合地帯を設定するの根本方針に則り日本側を中心都市日本側が其の実権を把握し得る如く考慮するの要あるは勿論なるも人種平等に関する日本の国是及猶太資本の誘致を目途とする日本の対猶太政策の大局に鑑み新都市計画の地域内適当なる場所又は之に接続して猶太区を設定する事亦已むを得ざる処たるべし。然共・・・

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民族問題関係雑件/猶太人問題 第十三巻


安藤富雄「カウナスにおけるビザ大量発給事件の考察」(日本福祉大学研究紀要 第109号 2003年10月)

・・・近衛外相から10 月7 日に出された指示(以下「近衛訓令」) では, 「ドイツ,オーストリアからのユダヤ避難民を日本に受け入れることは, 大局上面白からざるのみならず」,「我が国の実情は外国避難民を収容するの余地なきを以って, 此種避難民の本邦内地並びに各種植民地(満州を含む) への入国は好ましからず」と述べ, 次の2 点を指示している.

① 無国籍避難民に対しては渡航証明書を発給しない, ただし日本を通過するだけの者に対しては行先国への入国手続きの完了と, 250 円以上の提示金を持つ者に限り, 通過渡航証明書を発給してもよい.
② 日本との間にビザ相互廃止国の国籍をもつ「此種避難民」に対しては, これ以後本邦入国の願出があっても, 査証は与えざるはもちろん, その他の証明書は出さず, 「本邦渡航を断念せしむるよう説得」されたい.
 
  これに付記して, 「尚本内訓はユダヤ人に対し特別の手段を講じたるものにあらず, 現行外国人入国令第1 条の範囲内において措置するものにして, 外部に対し何等之を発表し居らざるに付右様御含相成度」として, 外部への公表を差し止めている(23).
  この指示は, ユダヤ難民の受け入れに関して日本政府から出された最初の具体的な方針であり,きわめて重要な文書といわなくてはならない. 後になって発表された「ユダヤ人対策要綱」とは違って, 「近衛訓令」はヨーロッパにあって避難民を送り出す在外公館の扱いについて指示したものである. 「ユダヤ人対策要綱」と併せて読むと, いわば外務省の建前と本音を聞くようで,そのギャップに驚かされる. 「ユダヤ人対策要綱」では, 日本の対外政策があたかも「人種平等の精神」で貫かれ, ユダヤ人を平等に扱っているように述べられているが, 「近衛訓令」では,明らかにユダヤ難民の入国を嫌悪し, 極力忌避するようあからさまに指示している. しかも, 外部へ公表しないということを示唆している. さらに, この訓令では「ユダヤ人難民」という言葉をあえて使用することを避けて, 「此種避難民」(外部に対しては単に「避難民」とするよう指示)として, ユダヤ人への差別を隠す意図が読み取られる. 当時杉原はヘルシンキの公館に在職しているが, これを目にしているはずである.
  山路ウィーン総領事は, その後も2 度にわたって同じ問題で外務大臣の指示を要請しているが,11 月18 日に出された有田外相からの回答においても, 次のような方針を確認している(24).
 
① すでに日本渡来途上の者であっても, 日本以外に赴かせるよう関係公館に連絡すること.
② 現行制度では一時滞在外国人の滞在期限の規定がないので, できるだけ渡来させないこと.
③ 満州, 支那については目下協議中, 近く通知する.
④ ユダヤ難民の入国禁止の件は公表しない.
 
このようにして, 「ユダヤ人対策要綱」が決定された1938 年12 月から, 日本がアメリカとの和解を断念して1940 年9 月に電撃的に結んだ日独伊三国同盟に至る2 年足らずの期間は, 在ヨーロッパ各国の公館ではユダヤ人難民の日本への渡航・入国問題は, この「ユダヤ人対策要綱」,「近衛訓令」の方針に沿って処理されたことになる. ・・・

・・・松岡外相から杉原領事代理への回答は数回に及んでいるが(8 月14 日, 8 月16 日, 8 月28 日, 9 月3 日), カウナスの領事館へ送った最後の電報(9 月3日) では, 「貴殿ノ如キ取扱ヲ為シタル避難民の後始末ニ窮シ居ル実情ナルニ付以後ハ往電第22号ノ通厳重御取扱アリタシ」と詰問している. 阪東宏氏はこれらの松岡外相回電について, 「どれもきびしいもので, ほとんど叱責に近い内容のものである」と所感を述べている(28).
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008096441